読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

総合研究所

shinjiro7=ネット巡回型・問題点指摘ロボット。武蔵大学・千田有紀教授の論文不正(捏造)問題追及。著作権は当方に帰属しています。 すべてのページの無断転載を禁じます。(連絡先) ivishfk31@gmail.com

強姦罪・強制わいせつ罪の刑法改正案を憲法の視点から考える

【1】

www.huffingtonpost.jp

【2】コメント (以下はあくまでも私見です。)

 上記記事にもあるように、法相の諮問機関「法制審議会」の性犯罪部会が16日、性犯罪の厳罰化に向けて刑法を改正する答申案をまとめた。答申案には、強姦(ごうかん)罪や強制わいせつ罪について、被害者の告訴がなくても罪に問える「非親告罪化」が盛り込まれた。

 この改正案を憲法の視点から考えてみよう。

 そもそも現行刑法において強姦罪、強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨は被害者の名誉を保護する趣旨であった。被害者の意思を無視して捜査機関が勝手に捜査を始め、裁判が始まってしまうと事件が公になってしまい、被害者の名誉が害されるので被害者に告訴権を与えて事件を刑事手続に乗せるかどうかを被害者の意思に委ねる趣旨である(注1)。

 そして現行刑法が強姦罪、強制わいせつ罪で定めている告訴権は、憲法13条の幸福追求権の一内容をなしている。幸福追求権は国民が自己の人生を積極的に築き上げるプラスの局面で、その意思決定のプロセスと内容を国家から干渉・侵害されない権利として議論されることが多いが、幸福追求権は、性犯罪の告訴権のように、国民が性犯罪の被害を受けたときに、その被害回復を求めて刑事手続に乗せるために告訴するかどうかを意思決定する、という人生のマイナスの局面でも問題になるからである。

 性犯罪において告訴権という権利を与えることは、個人の尊重(憲法13条前段)を基本原理とし、幸福追求権(憲法13条後段)とその中核をなす自己決定権を中心とした日本国憲法秩序に合致している。だからこそ現行刑法は告訴権を上記性犯罪の被害者に与えている。

 ところが、今回の改正案のように、性犯罪の被害を受けた被害者から告訴権を奪う、という内容の法改正は、被害者の名誉、個人の尊重原理、幸福追求権、自己決定権を無視し、問答無用で事件を刑事手続に載せ、裁判で事件のすべてを白日の下にさらすことを意味する。これは、ベクトルの方向としては、被害者の名誉や意思を無視してでも、性犯罪を処罰して社会秩序を回復することこそが公益および公の秩序にとって最重要であると考える、というベクトル方向での改正を行うことを意味し、結局のところ今回の刑法改正案は「公益および公の秩序」(注2)を個人よりも優先(注3)する自民党憲法改正案とベクトルの方向性が合致しているのである。この意味で今回の刑法改正案は、「公益および公の秩序」を個人よりも優先する自民党憲法改正案を一部具体化して先取りした内容の改正案であると言える。今回の刑法改正案を評価する向きもあるようだが性犯罪被害者の利益になる素晴らしい改正である、などと言って、手放しで喜んではいられないのである。

 

【まとめ】 

 強姦罪(強制わいせつ罪は省略します)が親告罪とされている趣旨は、女性が強姦罪の被害者になった時、被害女性が自己の名誉保護を優先して刑事裁判を利用しないようにするか、あるいは、たとえ事件が公になって自己の名誉が侵害されたとしてもあえて刑事手続を利用して犯人の処罰を求めるか、の選択権を与える趣旨でありこの選択権は被害女性が、自己が受けた強姦の被害を国家によって公にされないようにして自己の名誉を守りたい、と考える場合に国家によって事件を公にされることのない権利自由として幸福追求権(憲法13条)の一内容となる。すると、強姦罪を現行の親告罪から非親告罪に変更する刑法改正案は、幸福追求権の侵害となる。そしてこの刑法改正案は、被害女性個人の意思を無視して国家が強制的に強姦事件を刑事手続に乗せ、強制的に事件を公にして被害女性の名誉を犠牲にすることによって社会秩序の維持を図る、という点で「公益及び公の秩序」(自民党憲法改正草案13条)を個人の人権よりも優先する自民党憲法改正草案とベクトル方向が合致する。

 

(注)

(注1)ただし刑事訴訟法上は、親告罪について被害者の告訴がない場合に捜査機関が捜査することを禁止する明文規定は存在しない。

 

(注2)(参考条文)

日本国憲法

十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

自民党憲法改正草案】

(人としての尊重等)

十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

 

(注3)日本国憲法13条の「個人」の文言が自民党憲法改正草案では単なる「人」に変更されている点にも大いに注目されたい。