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総合研究所

shinjiro7=ネット巡回型・問題点指摘ロボット。武蔵大学・千田有紀教授の論文不正(捏造)問題追及。著作権は当方に帰属しています。 すべてのページの無断転載を禁じます。(連絡先) ivishfk31@gmail.com

ヒューマンライツナウ・伊藤和子弁護士「報告書」の研究2 AV出演被害女性は「債務奴隷」なのか?

【1】ヒューマンライツ・ナウ 国連への報告書32頁

http://hrn.or.jp/wpHN/wp-content/uploads/2016/03/c5389134140c669e3ff6ec9004e4933a.pdf

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【2】研究

1 ヒューマンライツナウ、伊藤和子弁護士の上記報告書によればAVに出演する女性は「債務奴隷」であるとされているが、本当であろうか?

 この点、伊藤和子弁護士は、上記報告書においてたとえば、「AV出演被害女性の一部には『債務奴隷』が存在する」といった限定的な書き方をしていない。そればかりか、何の留保も限定もなく「AVへの出演は・・・・債務奴隷に該当する」と書いており、あたかもAV出演被害女性全員が上記「債務奴隷」の定義に該当するかのような書き方をしている。そこでAV出演被害女性は一般的に上記「債務奴隷」の定義に該当するのかが問題となる。この点について以下検討する。

(1)上記報告書によれば「債務奴隷」の定義の前半部分①は

「債務者の人的役務の提供という形での担保から生じる状態」又は「債務の担保として、支配された状態において提供される人的役務」

とされている。

  現代日本でも、「担保」というものはある。たとえばYがXから金を1000万円借り、YがXに対して1000万円の貸金返還債務を負っている場合に、Yが自己所有の不動産(この価額を1500万円とする)に抵当権を設定する場合の、抵当権を担保物権といい、抵当権を設定した不動産が「担保」である。

 ところが上記報告書の「債務奴隷」における「担保」はすでになんらかの債務をXに対して負っているYが、上の抵当権の例における不動産の代わりに、「人的役務」を「担保」として差し出し、「人的役務」に担保権を設定する、というのである。しかも「報告書」によればこの「人的役務」は「支配された状態」において提供される、という。つまり「担保」として差し出す物が「不動産」なら登記しておけばどこにも逃げられないけれども、「人的役務」を「担保」として差し出すとなると債務者に逃げられてしまったら終わりだから、債務者を部屋に監禁するなどして逃げられないようにして「支配」するということであろう。

 「債務奴隷」のおおよそのイメージをお持ちいただけたであろうか?

 上記報告書によればAV出演被害女性はこの「債務奴隷」に該当するというのであるが、本当であろうか?一般的にそう言えるのかについて以下、検討してみよう。

(2)まずAV出演契約におけるAV出演は「債務者の人的役務の提供という形での担保」に該当するか。

 該当しない。以下理由を述べる。

 AV出演契約の「違約金」は、AV出演を契約したにもかかわらず女性がAVへの出演を拒んだ際に発生する損害賠償の定めであるにすぎない。伊藤和子弁護士は「違約金という債務」という言い方をしているが(上記赤線部分参照)、一般的にAV出演者は「違約金支払債務」なる債務を債権者に対して予め負っているわけではない。

 またAV業者は、アダルトビデオを製作・販売することが本来の企業活動なのであって、AV出演者に「違約金支払債務」を予め負わせたうえでその担保のためにAV出演という「人的役務」を担保に取ろう、という意思を、通常、有してはいないはずである。

 以上からすると、AV出演は、「AV の出演」という人的役務を提供することが、違約金支払債務の担保になっているわけではない。AV出演者は、違約金支払債務の担保のためにAV出演という人的役務を提供しているわけではなく、あくまでもAV出演義務それ自体が主たる債務である。

 以上を理由とする。

(3) ではAV出演契約におけるAV出演は、「債務の担保として、支配された状態において提供される人的役務」に該当するか。

 該当しない。

 なぜならAV出演者は、違約金支払債務を担保するためにAV出演という人的役務を提供するわけではなく、あくまでもAV出演義務それ自体が主たる債務だからである。

(4) 以上よりAV出演は「債務者の人的役務の提供という形での担保から生じる状態」にも「債務の担保として、支配された状態において提供される人的役務」にも該当しないので上記「債務奴隷」の定義の要件①には該当しない。

(5)「債務奴隷」の定義の要件②についても、AV出演者は、一般的に、違約金支払債務という債務を清算するためにAVに出演するわけではないから、要件②にも該当しない。

(6)以上よりAV出演者は一般的に奴隷制度廃止補足条約の「債務奴隷」には該当しない。伊藤和子弁護士は間違っている。

 

3 仮に、上記「債務奴隷」の定義に該当する被害女性、すなわち、「AVプロダクションとの間で違約金支払債務がすでに発生している女性であって、当該違約金支払債務を清算するために身体的に支配された状態にありAV出演を余儀なくされている女性」、が存在したとしても、あくまでそれはAV出演被害女性の一部に過ぎないはずである。実際、伊藤弁護士の報告書では「債務奴隷」の定義には該当しないケース、すなわち、AVプロダクションがまだ違約金返還債務を負っていない女性に対して「AVに出演しないのであれば違約金を払ってもらう」と脅してAVに出演させるケースが複数紹介されているのであって、AV出演被害女性の全員が「債務奴隷」として紹介されていたのではなかった。

 それにもかかわらず伊藤弁護士が、あたかもAV出演被害女性全員が「債務奴隷」であるかのように言い、日本に「債務奴隷的慣行」がある、とまで言うのはあまりにも誇張しすぎである(注1)。とにかく話を誇張し、できるだけ話を大きくして国連を動かそうという伊藤弁護士の意図が透けて見える。

  また、伊藤弁護士の言う「債務奴隷」のように、すでに発生した違約金支払債務を清算するためにAV出演という危険な行為を長期間にわたり余儀なくされる契約が仮にあったとしても、そのような契約は公序良俗民法90条)に反し、無効とされる可能性が極めて高い(注2)ので、国内法で充分に対応できるはずであり、わざわざ、日本が「補足条約」を尊重していない、として国連に報告するような問題ではない。

 

4  最後に

 男女の本質的平等と個人の尊重を基本理念とする日本国憲法秩序の下で、女性の基本的人権が保障されるべきことは改めて言うまでもないことであるが、いくら女性の基本的人権を守るためであるからと言っても、弁護士の肩書きと社会的信用性を利用し、「債務奴隷」に該当しない日本女性を「債務奴隷」であると述べる虚偽の内容や、極端に誇張した内容を記載した報告書を全世界に向けて流布させてよい、ということにはならない。嘘をついて国連を騙して国連を動かして、騒ぎを大きくして国際世論さえ動かしてしまえばもうこっちのものだ、といわんばかりの伊藤和子弁護士のやり方には、到底、賛成できない。いかに女性の人権保障という崇高な目的を掲げていても、その目的達成手段としてこのような汚いやり方をしてしまうと、結局、女性の人権保障も、社会的地位の向上も、もたらさないであろう。

 

(注1)

伊藤和子弁護士は日本に「債務奴隷的慣行」があると言うのなら日本の人口の何割以上が「債務奴隷」であれば「奴隷的慣行」があることになるのかについての判断基準を示すとともに、「債務奴隷」が日本国内に何人存在するのか、日本中を社会調査して正確なデータを公表すべきである。

 

 (注2)

たとえば娘の酌婦稼動による報酬を弁済に充てることを約し、父親が消費貸借名義で金員を受領し、第三者が連帯保証をした場合には、酌婦稼動による弁済特約は公序良俗に反し無効であり、父親の金員受領はそれと密接不可分の関係にあるから消費貸借、連帯保証も無効である、とした最高裁判例がある(最判昭30・10・7民集9・11・1616)。このように、人格の尊厳、自由を制限する行為は民法90条違反で無効とされる。