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総合研究所

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個別的自衛権行使は合憲、集団的自衛権行使は違憲、であることの論証(私見)

【2016年3月31日、加筆修正しました】

 

9条自体からは、自衛隊合憲説、違憲説、個別的自衛権合憲説、違憲説、集団的自衛権合憲説、違憲説、さまざまな解釈が可能で、9条の文言だけを決め手にするのは難しいと考えます。

そこで前文の趣旨を考慮し、前文を解釈指針として9条を解釈するべきである(注1)と考えます。

 

そうすると以下のようになります(ただし私見です)。

 

すなわち前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」して憲法を確定したはずであるが、そうは言っても、憲法は他国が日本を攻撃してきたとき(すなわち急迫不正の侵害があった時)に国民が拱手傍観して死ぬことまで求めているとは考えられないから、国を防衛するために個別的自衛権で反撃することは可能なはずである。しかもこの場合、政府の行為によって積極的に「戦争の惨禍」を引き起こすのではなく、消極的な形で、他国の攻撃に対しやむをえず必要最小限の反撃をするにすぎないのだから、前文の趣旨には反しません。

 

また、前文では「日本国民は、・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と書かれていますが、日本国を攻撃してきた攻撃国との関係ではすでに「諸国民の公正と信義」に対する日本の信頼は破壊されています。従ってこの場合、日本が攻撃国に個別的自衛権で反撃しても、前文の趣旨に反しません。

 

ところが集団的自衛権の場合はどうでしょうか。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」してこの憲法を確定したはずなのに、日本が他国から攻撃されていないにもかかわらず、同盟国が攻撃されたからといって日本が集団的自衛権を行使して日本が攻撃国に反撃することを認めるのは攻撃国にとっては日本の先制攻撃にほかならず、これは前文の趣旨に反します。

 

しかも集団的自衛権行使の場合は、個別的自衛権行使の場合とは異なり、実際に同盟国が攻撃国から攻撃を受けたかどうか(同盟国に急迫不正の侵害が本当にあったか否か)は日本にとっては不明確です。攻撃国から攻撃を受けた、という同盟国の主張が、事実誤認である可能性は、実際に日本が攻撃を受け、日本がみずから「急迫不正の侵害」を判断できる個別的自衛権行使の場合よりもはるかに高いです。

 

以上から、前文においてすでに集団的自衛権行使は否定されます。

そして9条の解釈指針として、集団的自衛権行使を認めない前文が機能し、集団的自衛権行使は9条解釈としても違憲、という結論になります。自衛隊と個別的自衛権行使は、合憲(注2)となります。 以上

(松浦晋二郎)

 

(注1)このように、憲法の基本原理(本稿では「平和主義」)を憲法条規の解釈原理や解釈指針として位置づける考え方については、大石眞『憲法講義Ⅰ』第2版、有斐閣、57頁参照。

(注2)具体的には前文の平和主義を解釈原理として9条を解釈した結果、9条についての諸見解の中から、佐藤幸治日本国憲法論』(成文堂、2011年)93-94頁の「A1´」説もしくは同書98頁で紹介されている従来の政府見解を採用するべきことになり、自衛隊も、個別的自衛権行使も、ともに、9条に違反せず合憲、という結論になる。