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総合研究所

shinjiro7=ネット巡回型・問題点指摘ロボット。武蔵大学・千田有紀教授の論文不正(捏造)問題追及。著作権は当方に帰属しています。 すべてのページの無断転載を禁じます。(連絡先) ivishfk31@gmail.com

【刑法】司法試験平成27年短答式刑法第10問(予備試験平成27年 短答刑事系第8問と同一問題)、出題ミスの可能性?   松浦晋二郎

刑法学者の基本書では通常、窃盗罪、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪、はすべて「奪取罪」(若しくは「移転罪」)とされる(※)。

 

この「奪取罪」はさらに、奪い取る態様が被害者の意思に反するか否かで「盗取罪」と「交付罪」に分類される。つまり

●窃盗罪、強盗罪は「盗取罪」、

●詐欺罪、恐喝罪は「交付罪」、

である。

 

ところが予備試験 平成27年 短答刑事系第8問(=司法試験短答式刑法第10問と同一の問題)では

窃盗罪や強盗罪を「奪取罪」、

詐欺罪や恐喝罪を「交付罪」、

と呼んで区別する、という語句選択の問題になっている。

 

たしかに、本問が、詐欺罪、恐喝罪を「交付罪」と呼ぶのは正しい。

しかし、「交付罪」との対比において見た場合、窃盗罪、強盗罪は「盗取罪」なのであって、これを「交付罪」との対比において「奪取罪」の語句を受験生に選択させるのはいかがなものか。「交付罪」との対比において窃盗罪、強盗罪にふさわしい語句を選択させるのであれば、それは「盗取罪」でなければならない。

 

本問は、受験生に「盗取罪」の語句を選択させるべきところを、「交付罪」との対比において「奪取罪」の語句を無理やり選択させる点で、大いに疑問が残る出題である。出題ミスの可能性がある。

 

たしかに「奪取罪」というと、「奪取」の日本語の意味から考えて、あたかも被害者の意思に反して財物の占有を移転する窃盗罪、強盗罪といった犯罪のみを意味するかのような誤った印象を受けがちではある。したがって、刑法の初学者は「奪取罪は窃盗罪と強盗罪と、不動産侵奪罪だけであって、瑕疵のある意思に基づいて財物の占有を移転する詐欺罪と恐喝罪は奪取罪ではない」などと誤解しがちではある。しかし司法試験(予備試験)考査委員ともあろうお方がまさかこのような初学者的誤解に基づく出題をすることはない、と信じたいところだが・・・。

 

(※)たとえば山口厚『刑法各論』第2版170-171頁、前田雅英『刑法各論講義』第5版223頁参照。

なお不動産侵奪罪も奪取罪であるが、本問とは無関係なので省略する。

 

●後日談

私は2015年11月25日、『司法試験の問題と解説2015』(日本評論社)を購入し、鈴木敏彦氏(弁護士・明治学院大学法学部教授)の司法試験短答式刑法第10問の解説を確認したが、鈴木氏は本問の出題者と同じく、窃盗罪・強盗罪を奪取罪、詐欺罪・恐喝罪を交付罪、として解説している。鈴木氏によれば本問は「奪取罪と交付罪の相違を基本から考え、強盗と恐喝の要件の違いを問う基本的な問題であり、法科大学院教育との整合性が保たれている問題と言える」とのことである(同書196頁)。しかし、間違った刑法理解に基づき出題された(としか思えない)司法試験の問題を、「法科大学院教育との整合性が保たれている問題」であると言う、ということは、法科大学院教育でもやはり間違った刑法をそのまま教えている、ということを意味するのではないか。もしそうであるとすれば非常にゆゆしき問題である。