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総合研究所

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声上げ始めた被害者=「時の壁」撤廃を―幼少期の性的虐待(松浦晋二郎コメント)

声上げ始めた被害者=「時の壁」撤廃を―幼少期の性的虐待 (時事通信) - Yahoo!ニュース

声上げ始めた被害者=「時の壁」撤廃を―幼少期の性的虐待

時事通信 8月23日(日)14時46分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150823-00000040-jij-soci

 

 幼少期に性的虐待を受けた北海道釧路市出身の40代女性が加害者の叔父を相手に起こした賠償請求訴訟(女性の勝訴確定)をきっかけに、専門家への同様の被害相談が増えている。
 ただ、時効など「時の壁」で訴訟や告訴を断念するケースもあり、女性は「泣き寝入りさせない社会に」と訴える。
 女性の弁護団の寺町東子弁護士には、昨年9月の二審札幌高裁判決以降、30~40代の女性から同様の性的虐待に関する相談が約20件寄せられた。「他にも被害者がこんなにいるのか」。同弁護士は驚きを隠せないでいる。
 性的虐待に詳しく、釧路市の女性の精神的な治療も行う東京女子医大女性生涯健康センターの加茂登志子所長は「子どもへの性的虐待は大半が親族か顔見知りによるもので、被害が分かりづらい」と指摘。「女性の勇気ある行動を今後につなげ、社会も性的虐待は許さないという認識を広く共有するべきだ」と訴える。
 一方、加害者の責任追及には「時の壁」が立ちはだかる。寺町弁護士は「相談を受けても、20年の除斥期間の経過を理由に賠償請求はできないと説明する場合がある」と話す。刑事事件でも強制わいせつ罪は7年で公訴時効を迎える。
 このため、女性と寺町弁護士らは国会議員と面会。被害者が20歳になるまで、刑事の公訴時効や民事の時効、除斥期間を停止するよう法改正することに加え、専門医の充実などを要望した。時効停止などを求める電子署名とともに国にも要望書を提出する方針だ。
 女性は最高裁での勝訴確定後、寺町弁護士を通じてインターネットにメッセージを掲載した。「絶望の中で生きている子どもたちが、10年後20年後に同じ壁にぶつからないようにしたい。一歩一歩進めていくしかない」
 電子署名のURLはgoo.gl/eFRw8G。

 

【松浦晋二郎コメント】

 現行刑事訴訟法では、公訴時効は、犯罪行為が終わった時から進行する(刑訴253条1項)とされており、公訴時効は、その事件についてなされた公訴提起によってその進行を停止する(同254条1項)。そして公訴時効の制度趣旨は、①時の経過により証拠が散逸し、真実を発見することが困難になることや②時の経過により犯罪の社会的影響が弱くなり、刑罰の必要性が減少ないし消滅していることに求められている(※)。

  すると、本件の法改正運動のように、被害者が性的被害を受けた場合に、いまだ検察官が公訴提起していないのにもかかわらず、被害者が20歳になるまで、刑事の公訴時効が停止することの理論的根拠はどこに求められるのであろうか?

  たしかに、性的虐待の被害者救済に取り組む弁護士たちの取り組みは高く評価できる。

 しかし最近、理論的根拠を明示しないままに、一般国民に対して賛成の署名だけを要求する弁護士や学者をたまに見かけるが、それでは困る。法改正運動をするなら法改正を支える理論的根拠を国民に対して明示すべきである。検察官が公訴提起していないのになぜ公訴時効が停止すると考えるのか。従来の公訴時効制度の制度趣旨との理論的整合性をどのように考えるのか。理論的に納得のいく説明がほしい。

 

 

(※)池田修・前田雅英著『刑事訴訟法講義』、東京大学出版会