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総合研究所

shinjiro7=ネット巡回型・問題点指摘ロボット。著作権は当方に帰属しています。 すべてのページの無断転載を禁じます。(連絡先) ivishfk31@gmail.com

集団的自衛権と安倍政権 ~安倍政権の「必要最小限度」要件のウソ~ 松浦晋二郎

集団的自衛権安倍政権 ~安倍政権の「必要最小限度」要件のウソ~ 松浦晋二郎

 

【忙しい方はここ↓だけ読んでいただければ充分です】

安倍政権は、集団的自衛権は「必要最小限度」等の「新三要件」で要件を限定しているから9条に違反しないと主張するが、事態対処法案の第3条4項ただし書では「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」となっており「必要最小限度」よりも大幅に緩和された要件となっている(というより、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」という要件では、事後的に「合理性がありました」「必要でした」といくらでも言えてしまうので、集団的自衛権の行使を限定する要件になっていない)。国民は騙されている。

(まとめ)

事態対処法案 ⇒「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」

となっているのに

安倍政権の説明⇒「必要最小限度」

と説明している。

国民は騙されている。

 

【時間に余裕のある方は下記もぜひ読んでください】

 

第1 はじめに:平和安全法制整備法とは

 平和安全法制整備法とは:「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」をいう。

 

 この「平和安全法制整備法」には10本の法律案があり、その中に「事態対処法」(正式名称:武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和及び独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律)がある。

 

 具体的には下記URLの76頁以下を参照していただきたい。

http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/prioritythemes/diplomacy/127724_02.pdf

 

 この「事態対処法」の法案に関して安倍政権がついたウソを見てみよう。

 

第2 安倍政権の「必要最小限度」のウソ

 事態対処法案の定める【事態対処法制】 では「存立危機事態」への対処ができることとされており、「新三要件」の下で、「武力の行使」が可能になるとされる(下記URL参照)。

http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/prioritythemes/diplomacy/127723_01.pdf

 

安倍政権によれば「新三要件」とは

 

(1)①我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は ②我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が 根底から覆される明白な危険があること

(2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を 守るために他に適当な手段がないこと

(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

 

をいう。

 

 (1)は①②の2つの場合を定めているが①「我が国に対する武力攻撃が発生したこと」の場合は個別的自衛権の話であり特に問題はないのでここでは検討しない。

 問題は②「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が 根底から覆される明白な危険があること」の場合である。

 これは「他国に対する武力攻撃が発生」した場合に、日本が当該他国と共同して攻撃国に対し反撃する権利を認めるものではないか、すなわち集団的自衛権の行使を定めるもので憲法9条に違反するのではないではないかが問題とされている。

 この点、上記「新三要件」によって要件を限定しているので集団的自衛権の行使は9条に反せず合憲であるというのが安倍政権の説明である。

 

しかし上記「新三要件」のうち

 (3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

の要件については問題がある。

 

 なぜなら事態対処法案の第3条4項ただし書では

「存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」

とされており、「必要最小限度」とはされていないからである。

 

つまり

事態対処法案 ⇒「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」

安倍政権の説明⇒「必要最小限度」

 

となっているのである。

 

 事態対処法案3条4項ただし書では「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」と明記されているのであるから、現場で自衛官が「事態に応じ合理的に必要」と判断しさえすれば、攻撃国への反撃で用いられる日本の武力行使は「必要最小限度」である必要はないのである。日本が集団的自衛権の行使する際、もしも「必要最小限度」を超えた反撃を攻撃国に対して行った場合であっても、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度で反撃しました」、と弁解すればこの法律上はOKなのである。

 

 ところが安倍政権事態対処法案の集団的自衛権は「必要最小限度」に限定されているから憲法9条に違反しない、とのウソの説明を国民に対して行っている(注1)。

 

第3 事態対処法3条4項の条文(案)の確認~

 

 最後に、具体的に事態対処法3条4項の条文(案)を確認してみよう。

 

http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/prioritythemes/diplomacy/127724_02.pdf

の79頁を参照していただきたい。

 次のようになっている:

 

(武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処に関する基本理念)

第三条

4 存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。ただし、存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。

 

 

第4 補足:特定秘密保護法と「存立危機事態」

 ちなみに同じ79頁には第3条6項があり、次のような法律案になっている。

 

武力攻撃事態等及び存立危機事態においては、当該武力攻撃事態等及び存立危機事態並びにこれらへの対処に関する状況について、適時に、かつ、適切な方法で国民に明らかにされるようにしなければならない。

 

 このように第3条6項では「適時に、かつ、適切な方法で国民に明らかにされるようにしなければならない。」と書かれているのだから、日本が集団的自衛権を行使した場合には直ちに「存立危機事態並びにこれへの対処に関する状況」に関する情報が国民に明らかにされるはずだ、と考えるのは甘い考えである。

 

 なぜなら政府が「存立危機事態並びにこれへの対処に関する状況」に関する情報を特定秘密保護法の「特定秘密」に指定したうえで、たとえば60年後に国民に公開するということもありうるからである(注2)。将来的に日本が集団的自衛権を行使した場合、「情報公開せよ」とうるさく騒ぎ立てる国民がいたとしても60年後にはたいてい死んでいるか、情報公開そのものが意味をなさなくなっている可能性が高い。しかし60年後に情報公開される場合であっても、「適時に、かつ、適切な方法で」国民に明らかにしたのだからなにも問題はない、ということにされてしまう可能性がある。以上

 

(注1)

総理補佐官の磯崎陽輔氏も

「◇〈私の主張〉憲法解釈変更の4つのキーワード(7月19日)」において「必要最小限度」を強調している。下記URL参照。

http://isozaki-office.jp/#myopinion

 

(注2)

「特定秘密の保護に関する法律」の第3条、4条を参照。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H25/H25HO108.html