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総合研究所

shinjiro7=ネット巡回型・問題点指摘ロボット。武蔵大学・千田有紀教授の論文不正(捏造)問題追及。著作権は当方に帰属しています。 すべてのページの無断転載を禁じます。(連絡先) ivishfk31@gmail.com

安倍総理の「火事のたとえ話」の問題点 松浦晋二郎

安倍総理の「火事のたとえ話」の問題点  松浦晋二郎

 

第1 安倍総理の「火事のたとえ話」とは

 2015年7月20日、安倍総理がフジテレビ「みんなのニュース<緊急生出演!国民のギモンスペシャル>」に出演し集団的自衛権を火事に例えた。

 安倍総理の「火事のたとえ話」とは次のようなものである。「アメリカ家の母屋」が火事になって、「アメリカ家のはなれ」にも火が燃え移ったとき、そのまま放っておいたのでは日本家にも燃え移るので、「アメリカ家のはなれ」の消火活動を日本も手伝う必要がある、という話である(以下では単に「総理のたとえ話」、「たとえ話」と呼ぶ)。

 このたとえ話には問題が多い。本来、たとえ話というのは話をわかりやすくするためにするのが普通だが安倍政権の場合は問題点を国民に隠して誤魔化すためになされる。

 以下、たとえ話の問題点について具体的に検討する。

 

第2 「総理のたとえ話」の問題点

1 日本には柳条湖事件(1931年9月)の重大な前科がある。柳条湖事件において関東軍はみずから南満州鉄道を爆破しておきながら「中国が日本を攻撃してきた」と関東軍がでっち上げ、それを口実に中国軍を攻撃して中国東北地方を占領した。こうした手口を二度と軍隊に使わせないという反省から平和主義の日本国憲法が作られた。たとえ話に即して言えば「日本家自体が過去に重大な放火犯を犯したため永蟄居中」なのである。ところが総理のたとえ話は、こうした日本が過去に犯した重大な前科についての反省が全く見られない。たとえ話の日本家は「私の家は過去に犯した柳条湖事件の重大な前科を真剣に反省しております、外に出てまた悪事を働くといけないので二度と家の外に出かけることはしません、アメリカ家のはなれの消火活動を手伝うこともしません」、という結論になるのでなければおかしい(注1)。たとえ話はその点が誤魔化してある。

 

2 総理のたとえ話は、日本だけが同盟によって一方的にアメリカから利益を受けているので、ご恩返しとして「アメリカ家のはなれ」の消火活動を日本も手伝う必要があるといわんばかりの話し方であった。

 しかしこれは誤魔化しである。

 日米同盟は、「アメリカにとっての目的は、極東におけるアメリカの軍事戦略として、日本にアメリカ軍の基地を設置し使用することにあるのに対し、日本にとっての目的は、日本の防衛をアメリカに協力してもらうことにある。いわば基地使用と防衛協力が対価関係に置かれているのであり、アメリカによる基地使用は、日本を防衛するという目的に限定されず、極東における軍事行動のためにも使用しうるのである(安保約6条参照)」(高橋『立憲主義日本国憲法』第3版58頁)。

 これを総理のたとえ話についてみると、日本家の中に実際には存在しているはずのアメリカ家の基地が存在しない内容になっており、日米同盟にすでに存在している日米間の上記対価関係を国民が気付かないように誤魔化してある。

 

3 このたとえ話では、「アメリカ家の母屋」が火事になったことが前提である。つまりアメリカが放火の被害者になることが前提である。しかしフジテレビの番組でやくみつる氏が述べていたように、アメリカが先に相手国に火をつける、つまりアメリカが相手国に先に先制攻撃(もしくは挑発)を仕掛けるという危険性もあるのであり、その反撃として相手国がアメリカを攻撃してくるという場合もありうる。この場合もし日本が、アメリカが先に先制攻撃(もしくは挑発)を相手国にしかけた事実を知らないまま集団的自衛権を行使してしまったらどうなるか。総理のたとえ話ではこうした事態の生じる危険性を、国民が気付かないように誤魔化してある。

 

4 集団的自衛権では、日本だけが集団的自衛権を行使することが前提であるが、アメリカに対する攻撃国も他国との同盟に基づいて集団的自衛権を日本に対して行使してくる危険性があり、この結果、日本が思いもよらない形で戦争に巻き込まれる危険性がある。しかし総理のたとえ話では、この危険性を国民が気付かないように誤魔化してある。

 

5 安倍政権は「新三要件」によって集団的自衛権の要件が限定されているから合憲であると主張するが、集団的自衛権が実際に行使された場合、「新三要件」が実際に満たされていたかどうかに関する情報は特定秘密保護法の特定秘密に指定され国民には開示されないことになると思われる。国民に情報が開示されなければ国側ででっちあげ放題になる。すると集団的自衛権は限定要件で要件を絞ったから合憲である、と言ってみても、意味がない。しかし、安倍総理のたとえ話にはこの問題点は誤魔化されている。

 

第3 その他

 総理の言う「はなれ」が集団的自衛権との関係で何を意味するのかはよくわからなかった。おそらく海上の米艦のことであると思われる。 以上

 

 

※注

(注1)おそらく個々の自衛隊員は真面目で優秀な方々ばかりなのであろうとは思う。しかし人間は、個人としては真面目で優秀でも組織として動くときに、権力を濫用し暴走するということがしばしばある。こうした危険性について憲法上、しっかり考えておく必要がある。